だから、恋なんて。
でも、いつも頼もしくて姉御肌な千鶴の、こんな頼りない顔は見たことがない。
きっと簡単に口に出せるほど軽い問題ではないんだろうけど。
だからこそ、少しでも千鶴の気持ちが楽になればいいと思う。
「千鶴、話してよ。私、千鶴の辛そうな顔見ていられない」
立ち止まって、千鶴の顔をしっかり見ながら。
「…え?」
数歩先に行って、振り返って、びっくりしたように私を見つめる。
「この間の家出の理由」
「あ……うん、びっくりした」
「なんでびっくりするのよ」
「だって…」
アハハッと笑い出す千鶴の声で、張りつめていた空気が和らいだ気がした。
何故かとてつもなく緊張していた私の頬も少し緩む。