だから、恋なんて。
「結婚して、最初から避妊してたわけじゃないの」
「うん」
「直人には前の奥さんとの間に子供がいるでしょ」
「うん」
「でね、怖くなった」
「怖くなった?」
怖いの理由が思いつかなくて、千鶴に視線を向けると、自嘲気味に笑う。
「そう。一年たって、避妊もしてないのに妊娠の兆しはなくて、あぁ、私の所為なんだって、怖くなった」
……その時、千鶴は三十六歳だったはず。
一般的にみれば高齢出産の枠組みだけど、だからといってみんなが不妊になるわけじゃない。