だから、恋なんて。

更衣室で着替え終わってロッカーをパタンと閉めると、榊がドアを開けて入ってくるのが見える。

「榊、おはよう」

「おはようございます…美咲さん、今日遅くないですか?」

いや、アンタに言われたくないよ。でも、今日は確かにいつもより少し遅くなった。

予想以上に寝痕が手ごわくて…。

半笑いで榊が指さす先は、私の眉間のちょうど上の辺り。見事にくっきりと枕か何かの痕がついている。

わかってるくせに聞いてくるなんて、性格悪い奴。

「しかもちょっと浮腫んでません?」

「うるさいよ」

我慢できずに笑い出した榊を横目に更衣室を出ようとすると、早着替えの榊がうしろから追いついてくる。

榊の通勤着はほとんどワンピース。というか、必ずワンピース。絶対ワンピース。

チーっとチャックを下せば、もしくはスルンと脱いでしまえばあとは白衣を身に着けるだけだから楽なんだそう。

確かに下はストッキングも履いてればあっという間に着替えられるし。

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