だから、恋なんて。

「あ~……、最悪」

目覚ましの音にわずかに痛む頭をゆっくり持ち上げる。カーテンの隙間から漏れる光を感じてうっすら瞼を持ち上げただけでわかる、顔の浮腫み。

歯磨きをして寝たはずのなのに、いつもより粘つく口腔内によりいっそう気持ちが悪くなる。

昨日はご飯を作る気がしなくて、適当に買った惣菜をつまみながらいつもより多めにビールの缶を空けてしまった。

次の日が日勤の時は、いつも一缶だけって決めてたんだけど。

チャラ医者のチャラチャラした声が気に入らないのに何度も思い出されて、悔しくなって飲み過ぎた。

冷たい水で顔を洗って鏡を見て、想像以上の出来上がりに悲しくなる。

「ホント、最悪」

見事に浮腫んだ瞼も、頬も、何の寝痕だか縦にすじが入った額も。

うーん、どうしたらいいんだろう。

芸能人のメイクさんなんかだとこの残念な顔の処理なんかは朝飯前なんだろうけど、素人の私にはご飯よりも重要なわけで。

千鶴に慣らされて、朝ご飯をちゃんと食べるようになったこの頃。

いつもは食事をしてからメイクをするけど、今日ばっかりはどうにか寝痕を隠そうと苦戦して、結局大豆飲料だけ一気飲みして仕事に向かう。

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