だから、恋なんて。

煮え切らない私を尻目に、榊が師長にアイツからの連絡がなかったか確認してくれた。

「やっぱり先始めましょうか。さっき少し遅れるって師長に連絡あったみたいですし」

「あぁ…うん」

反応の鈍い私に気付いているのか、榊は幹事らしくその場を仕切り始めてくれて、店員さんに目配せしただけで皆の前に乾杯の飲み物が運ばれてくる。

座敷に入ってすぐのテーブルの端に榊と並んで座る。

早く飲みたくてウズウズしている師長の先走った乾杯音頭で、ジョッキに注がれたビール片手に挨拶大会が始まり、次々に運ばれてくる料理にみんなが大興奮で手を伸ばす。

隣の人でさえ顔を近づけて話さないと聞き取れないくらいの騒ぎ。

追加注文は各テーブルでしてもらってもオッケーだけど、そこは一応幹事。

榊と手分けしてテーブルを回りながらドリンクオーダーを取ったり、適度に話に加わったり、乾杯したり……。

ゆっくりと自分の席に座って…なんて時間はほとんどない。

< 225 / 365 >

この作品をシェア

pagetop