だから、恋なんて。

「あぁ、そっか……そういうのって無自覚なんだ」

ひとり納得するように軽く頷いて濡れた唇をニヤリと歪める。

職場で見せるのとは違う表情にドキリと胸が揺れる。

思わず吸い込まれるようにぼーっと見つめていると、片手を私の足に触れそうなほど近くについてグイッと顔を寄せてくる。

ちょっ、なにっ?

油断していたところに突然肌が触れそうなほど近くに距離を詰められて、反射的に体を引くけれど、それを予想していたかのように先生の手で腕を掴まれる。

それ以上体を引けないくらいに絶妙な力加減でとらわれ、一瞬ここが宴会会場だと忘れてしまう。

口端を上げたままの青見先生の形のいい唇が、私の目の前をかすめて耳元に近づくのをただ見つめる。

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