だから、恋なんて。

得意げに言われて、視線を上げて壁上の時計を見る。

確かに、点滴更新の時間は近づいてたし、指示簿のチェックもまだできてなかったから、先に言ってもらって助かった……と思う。

この人、ほんとこーゆーところに長けてる。

さっきの年配のドクターも、一声かけてくれたらよかったのかもしれないし。

必要はないかもしれないけど、仕事を円滑に行うためのコミュニケーションの一環だと思うけど。

不必要なくらい近い距離でじーっと見られている気はするけれど、それはさておき指示通りに点滴を変更して、ちょうど鳴ったモニターアラームに対応して……気が付いたらアイツの姿はもう無くて、ズルい、なんて思ってしまった。

だって、アイツは自分の都合でいつICUに来てもいいわけで。

忙しくても、時間に余裕があってもそれは突然で。

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