だから、恋なんて。
扉が開くたびに期待するこっちの心臓がもたなくなりそうだと思ってしまう。
せわしなく開閉する扉に忌々しさを覚えながら、意識しないように心掛けて目の前の業務に集中する。
そうだ、今日はなるべく早く上がらないとダメだったんだ。
この間雫の誕生日兼四十路会を開催してから約一か月ぶり。
千鶴はこの間会ったけど、雫にはあれからまともに会っていない。
後姿なんかをチラッと見かけただけで、会話もメールなんかも交わしてない。
だから、あれから……三十六歳の誕生日を迎えてからの雫が、どうやって自分の気持ちと折り合いをつけながら先輩と働いているのか、気になってはいるけれど聞けないでいて。
聞きたいけれど聞くのが怖いような、そんな気がしていた。
私が経験することのできない深い想いに、どうやって納得するのか教えてほしいような気持ちになる。
多分、ううん、きっと。
私は雫のことが羨ましいんだと思う。