だから、恋なんて。

千鶴はいつも最後には眠くなっちゃうタチ。

三十五を越えてから、眠くなるまでの我慢がきかなくなった気もするけど、一度寝てしまえばもう復活することはなくて。

もうそろそろ帰ろうかと私が纏めてお会計を済ませる間に、雫がタクシーを呼んでおいてくれる。

さて、タクシーまではなんとか二人で歩かせるとして…。

さすがにタクシーから自宅まで引きずっていけるはずもなく、たまにはいいだろうと携帯を取り出して直人さんの名前を探す。

直人さんのことだから、千鶴が帰ってこないのに先に寝ているなんてことはないだろうし。

「もしもし」

「あ、夜分にすみません。乙部ですが、千鶴を迎えに下まで降りてきてもらえますか?」

なんていういきなりの頼みも、私に貸しがある直人さんが断るはずもなく。

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