だから、恋なんて。
行き先を告げてなんとなく窓の外に視線を移す。
ヤバい、家に着くまでに寝ちゃいそう…。
適度な温度とわずかな振動が眠りを誘う。
おまけに、タクシーの運転手さんの趣味なのか、車内にはなんとも穏やかなクラッシックが流れている。
うつらうつらと目蓋を閉じそうになった瞬間。
鞄の中で震える携帯に気付いて、無意識に電話を受ける。
「美咲さん?」
耳元で聞こえる声に、びっくりして携帯画面をみるけど、そこには知らない番号。
でも、この声は……。
「オペは?」
「うん、今から手洗い。まだ家に着いてないの?」
「うん…もうちょっと」
窓の外はもう見覚えのある景色を映している。