だから、恋なんて。

「真面目そうな人ですよね、眼鏡かけた。チャラチャラしてないし、頭よさそう
だし」

「いいなぁ、私はどの人かわからないや。でも、医者だから頭いいでしょ、だいたい」

「いい加減二人とも飲みすぎじゃない?」

「でも実は、そんな人のほうがめちゃくちゃSだったりするんじゃないです?」

「そうかも~!医者の顔と恋人の顔使い分けたり?」

「……………」

「二人の時は超甘々だったり?」

「え~!私は逆のパターンもいいなぁ。美咲にはやっぱりドSな感じがいいんじゃない?」

「だから、私はドクターなんて嫌なんだって!SでもМでもどっちでも」

言った勢いで焼酎をグイッとあおり、二人の顔を見ると、呆気にとられたように口の開いた千鶴がそっとグラスをテーブルに置く。

「美咲…あんた、まだ…」

「美咲さん……」

気の毒そうに注がれる二人の視線を受け止めきれずに、なんとなくメニューを広げる。

せっかく雫も頑張って盛り上げてくれたのに、また変な空気になっちゃった。
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