だから、恋なんて。
アルコールで正常判断の鈍った私は、あろうことか抗議するために口を開けてしまった。
多分私よりは確実に酔ってなかった彼は、その隙間からするりと舌をすべり込ませ、それ以上抵抗できないように腰と背中を引き寄せられる。
真夜中のマンションの前で、どのくらい捕まっていたかわからない。
自分では目一杯抵抗していたつもりだけど、酔った女の抵抗はやはり有効ではなかったようで。
結局、マンションの住人らしき人が二人組で話しながら出てきて、やっと彼の体が離れた。
抵抗に疲れたのと、続けられたキスに息が上がったのとで、離れた瞬間にも彼にもたれかかるように足がよろめく。
その私の体を支えて、耳元で「続きしたい?」と囁いたその声がとても粘着質で気持ち悪くて。
悪酔いした時のように吐きそうなのを我慢しながら、彼の体を突き飛ばして自分の部屋に逃げ帰った。