だから、恋なんて。

もう家庭があって、子供もいて…っていう同年代の子は「今さら誰にみせるわけでもないし」なんて笑って、平安時代みたいな素顔をさらしているけどさ。

独身のわたしとしては、そこまで思い切りよくいけなくて、一応薄く化粧をしたまま夜を明かす。

それでも若い看護師とは明らかに違う肌のくすみが気になって、明るくなってくるにつれて、早く帰りたい気分になってくる。


「お疲れ様です」

あり得ない時間帯に青見先生の声が背後で聞こえて、思わず体を固くする。

「お…お疲れ様です」

「どうですか?」

すっと隣に立つ気配に、頭がうまく回らなくて、何がどうですかなのか思いつかない。

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