だから、恋なんて。

決して広くない玄関で、二つの荷物をどうにかしようと格闘中の千鶴。

その千鶴の顔は、多分、っていうか絶対にすっぴんで…。

「なに、今日って仕事行ってなかったの?」

化粧しないで仕事にいくほど千鶴はまだ所帯じみてはいないわけで、すっぴんにスースケースとエコバックという変な組み合わせに全然状況が飲み込めない。

「はぁ?行ってきたわよ。そんなことより、この状況見て助けようとは思わないの」

「あ、ごめん」

なぜか不機嫌チックな千鶴の迫力に押されて、慌てて手に持たれたままのエコバックを受け取る。

お、重たい…、何入ってんの、これ。

広げてみると、そこには野菜だけじゃなくて肉や魚も入っていて、ざっと見ても一日、二日じゃ食べきれない。

取りあえずそれを持ってキッチンの冷蔵庫前まで持っていく。

寝ぼけた頭でも、さすがに肉や魚はすぐに冷蔵庫にいれるべきなのはわかる。

こんなに買ってきて今からパーティでもするつもりなんだろうか。といっても、何のパーティなのかも検討がつかない。
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