だから、恋なんて。

「なんだろ?忘れ物かな」

「さぁ…なんでしょう」

酔いを無理矢理醒ました千鶴だったけど、やっぱり酔っ払ってたのかと思っていると、ニコニコしながらギャルソンに手を振って出てきた。

「何?忘れ物?」

「そうそう、忘れるとこだったわよ。ほら、さっきのギャルソンの」

言いながらヒラヒラと振る一枚の紙切れを見ると、数字やらローマ字が並ぶアドレス。

「…結局、千鶴が聞いたんじゃん」

「ぬかりないですよね、ほんと」

もう忘れかけてたギャルソンの顔を思い出して、お気の毒にとか思ってしまう。

うふふっとニヤける千鶴は、完全にどうでもよくなって携帯をいじる雫の鞄にその紙切れを突っ込む。

「あちらは雫を気に入ったみたいよ」

「えー、いりませんよ」

本気で嫌そうな雫は、物静かなクールビューティ具合が魅力で、大体の男の人は初対面で雫を気に入る。

「残念ね、美咲」

ニヤニヤしながら私の頭を撫でる千鶴。ほんとにうっとおしいッたらないわ。

「四十路おめでとう~!っての、聞こえてたみたい。四十には見えませんよねって言ってたんだけどね、あのギャルソン」

余計なお世話なんですけどっ!
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