だから、恋なんて。
「千鶴から、何も聞いてませんか」
「聞いてません」
「じゃあ、どうして……」
「どうして?」
「千鶴は…理由を言ってなかったですか?」
「理由?」
「……なんで…」
まだ頭の中で整理できていないのか、時々頭を振ったり、首を傾げたりしながら呟く。
不倫、なんて言葉が飛び出すわりに、確証があるわけではないようす。
自分を落ち着けるためか、温くなり始めたコーヒーを一口含んで、口を開く。