ドライアイス
雨は容赦なく頭上から降り注ぐ。

空は灰色に覆われていて、太陽すら姿を見せてくれない。


「帰るなら、早く着替えてきなって!皆見てるから!!」


由梨に促されて、ようやく道着から制服に着替えることを決意した。




今更道場に戻るわけにはいかないので、体育の授業でいつも使っている女子更衣室で着替えを済ませた。

校門に向かうと、スマートフォンをいじる由梨の姿が見えた。


「由梨、もしかして待っててくれた?」


「当たり前じゃん!今日はヒナとお茶して帰るって、決めたの!」


「いつもの喫茶店?」


「そうそう!あそこのケーキ食べるの!!楽しみ〜」


喫茶店に行く目的が、コーヒーではなくケーキであることは置いておこう。

由梨はわざわざ待っていてくれたのだ。

雨の中、いつ戻ってくるとも分からない私を待つのは退屈だっただろう。


「よーし、今日は喫茶店の後カラオケも行かない?」


ひとつ、提案をしてみる。
由梨はカラオケが大好きなのだ。

「マジで?いいじゃん、カラオケ!ヒナとカラオケで歌うの好きなんだ〜!」


「じゃあ決まり!まずは喫茶店からね」


リュウと由梨の関係には、今は触れないでおこう。

いつか、聞いて見たいけど。

リュウが何を考えてるのか、それが1番の気がかり。
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