山神様にお願い


 薄暗い無人の店内を見回して、足を一歩踏み入れた。そして声を出す。

「・・・すみませーん、こんにちはー」

 私の声は響きもせずに店内の暗がりに吸い込まれて消えていく。

 施錠もされてなかったし、私が来ることは判ってるはずだけど。あれ?・・・うーん、自信がなくなってきちゃった。でも、とりあえず、もう一回。

「こんにちはー!」

「・・・はーい!」

 あ、返答があったぞ、そう思ったら、店の一番奥の細い階段から、白い足が見えた。

 続いてズボン、腰、胴体が出て、階段の入口に片手をついて体を支えながら、男性が顔を覗かせた。そして私を見て笑う。

「はい?」

 裸足だ。

 この兄ちゃん、裸足だよ。

 ぼーっとみてしまったけど、私はそこで我に返る。慌てて口を開いた。

「あ、こんにちは。あのー、アルバイトの面接に来ました、鹿倉と申しますが・・・」

「アルバイト。・・・ああ!」

 男性は、あらあら、と言いながら降りてくる。

 いや、あらあらって。もしかして、忘れられていたのかしら・・・。ショックだわ、そうだったら。

 幸先わる~・・・。そんなことを思って勝手にテンションを下げていたら、男性が近づいてきた。


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