山神様にお願い


 裸足で歩くので、ぺたぺたと音がする。つい、彼の足元を見てしまった。

「ごめんね、実は、忘れてました。店長の夕波です。どうぞ、鹿倉さん」

「・・・失礼します」

 この人が、店長さんなんだ。夕波、さん。私は彼の後ろからついていきながら、その後姿をじっくりと眺めた。

 背は高めだ。前から見たら短髪なのかと思ったけど、後ろが長い髪の毛だなあ。割合がっしりした肩と背中。でも腰は細いなあ~・・・。なんだろう、水泳をしてたとかかな?腕が長くて素敵な逆三角形―――――――

 つい色々と想像と妄想を交互にしながらついていくと、カウンター席の椅子を出して、どうぞと言われる。

 私はそこに座って、同じように前に腰掛けた店長さんに向き直る。

「鹿倉ひばりです。宜しくお願いします」

「うん、宜しくね。ええと、いつから入れますか?」

「え?」

 私は呆気に取られる。

 いつから入れる?―――――――え、採用ってこと?

 瞬きを数回繰り返して、目の前で私を見る男性に聞いた。

「あの――――・・・あの、雇っていただけるんですか?」

 今度は相手がきょとんとした顔をした。

「うん。働きにきたんでしょ?」

「ええと、それは、はい、そうなんですが。あのー・・・私でいいんですか?」



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