山神様にお願い


「夕波店長!」

「ハロー、久しぶりだねえ、シカ坊」

 彼の腕の中でぐるんと無理やり体を回転させて、私は久しぶりに見た店長の顔を見上げる。

 前は短めで後ろは長めの黒髪。色白でピンとはった肌。細い狐目が優しくカーブしている。

 ・・・夕波店長だ!!本物だああああ~っ!!

「わ・・・わあ!お、お、驚きましたよ、もう!店長だ~!」

 私は改め驚いて、何とか声を絞り出す。

 うわああああ~!!ビックリした!本当にビックリしたああ~っ!!もう、もう、どんな変態さんに捕まったのかと思ったじゃないよ~!!

 あははは、といつものあけすけで軽い笑い声をもらして、店長が言った。

「待ち伏せ、成功だ。もうちょっと待つか一度帰るか悩んだけど、姿が見えてよかった」

 俺はラッキーなどとにんまり笑っている。それならそうと、まともな方法で近づいてくれたらいいものを!結構な恐怖を体験してしまったではないですか!

 私はバンバンと手の平で彼のライダーズジャケットを叩いた。

「そ、そうだ!どうしてここにいるんですか!?山神には行きました?いつ戻ったんですか?どうしてこんなに―――――――――」

「はいはい、落ち着いて、一個ずつね。でもまあ、取り敢えず、先にこれ」


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