山神様にお願い
何だか一人で盛り上がってた分、私のガックリ度も半端なかった。
『あれ?シカ~?』
電話の向こうで能天気な店長の声が聞こえる。低くて軽い響きのあるその声は、私の耳から全身に伝わって、失くしたばかりの体温を取り戻してくれた。
コホン、と一度空咳をする。
「・・・はい、店長。明けましたね、おめでとうございます」
『ああ、いたの。どっかいったのかと思った』
そう言って店長は笑う。
俺と離れて寂しくないの、とか言っておきながら、そんなことは微塵も感じてないような雰囲気だった。
私はちょっと拗ねたような気持ちになって、ぶーぶー言う。
「店長あんなに騒いだクセに、メールもくれてませんでしたね!」
すると電話の向こうでクククク・・・と笑い声が聞こえた。
『そっちもくれなかったでしょう。メールも電話も、なかったけど?』
「そ、それは、そうですけど・・・」
『久しぶりの家族と会って、俺は邪魔だろうって思ったんだよ』
「邪魔なんかじゃないです!妹には店長の話がバレて散々からかわれましたし」
『へえ、シカ坊には妹がいるのか。やっぱり名前も動物なの?』
笑ってしまった。やっぱり気になるのはそこなんだ、と思って。私はつい笑い声を漏らしてしまう。それから電話に向かって答えた。