山神様にお願い


 2月がくるのは早かった。

 店長が知っていると判ってからは私の気持ちは軽く軽くなり、部屋探しも手伝って貰ったし、色んな片づけを休日にした。それも店長は手伝ってくれた。

 母親がこっちに出てきて卒業の為の袴をレンタルし、研修と入社式の為のスーツを新調しにいったときは、俺は遠慮しておくよって言ったけど、妹から色々聞いてしまっていた母親があなたの彼氏さんに会いたいといったので、店長も出てきてくれたのだ。

 珍しくキッチリとした格好の彼は格好良かった。

 そして、うちの母親とも上手に話していた。いつものたら~っとした軽い言い方はどこへいったか、そんな会話も出来るんですかっ!?って胸倉つかんで詰め寄りたいほどに礼儀正しい話し方をしていた。

 いつかのヤンキーのお客が、店長の後輩だったと今も信じられない私だ。だって、この人まともに見えるよ?って。

「じゃあね、ひばり。卒業式にはお父さんとこっちにくるわね」

 そう言って母親が帰ったあと、私の部屋に来た店長は、私を新しいスーツごと抱いたのだ。

 しかも!玄関で。部屋に入った瞬間にドアに押し付けられて、いきなり襲われるだなんて誰が思うだろうか!

 少なくとも私は思わなかった。だから仰天して、抵抗もしてみたのだ。・・・まあ、意味ないジタバタでしたけど~。

「叫んでもいいけど、近所の人に警察に電話されちゃうよ~?皆が来た時素っ裸なんて、シカって勇気あるんだね~」

 そう楽しそうに私を脅して、彼は私を黙らせたのだ。


< 353 / 431 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop