山神様にお願い


「ありやっしたーっ!!」

 リュウさんの声が大きくとんで、最後の客を見送ってきたトラさんが暖簾を下ろしてきた。

「お疲れ様でーす」

 俺は二人にそういう。

「・・ああ、まーじで今日は忙しかったな~・・・」

 汗でぐっしょりの頭にまいたタオルを下ろして、リュウさんがカウンターにもたれかかる。俺もふう、と一息ついて、これから片付けなければならない店の中を見回した。

 ほんと、忙しかった。

 時期は6月で、居酒屋としては閑散期に入るこの頃、どうして今晩に限ってこんなに忙しかったんだろう。でも近くの大学のサークルメンバーが来ていたようだったから、遅めの歓迎会かなんかなんだろうけど。

 テーブル席の散らばった瓶ビールを集めていたら、後ろからトラさんが声をかけてくる。

「ようウマ、あれ、もしかしてお前の学校のサークルか?」

「違いますよ。うちの学校でアメリカ舞踊サークルなんて聞いたことないですもん。騒がしかったですね~」

 瓶を詰め込みながら苦笑してそう言うと、トラさんとリュウさんが嫌そうな声ではもった。

 ああ、えらく喧しかった、って。

 賑やかな学生の集団だった。うちの店には飲み放題などのメニューはない。それは料理にあった酒を飲んで、飲食をちゃんと楽しんで欲しいというリュウさんの希望でって聞いたことがある。だから安くて量をもとめがちな学生は、あまりこない居酒屋なのだけれど・・・今晩は何と大学生が11人も来たのだ。座敷はほぼ貸切の勢いで。


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