山神様にお願い


 フリーターであるツルさんはオープン当初からいる縁の下の力持ちらしいので、繁忙期は集中的に入り、普段は学生組み(つまり、私とウマ君だ)が入っている。

 元の店がご飯屋さんだけあって、飲み処にしては客席がある店なので、4人入っても結構な忙しさだ。

 それで、私もやっと人手として認めてもらえるようになった今晩、ウマ君と一緒に入ることになったってわけで。

 私達の顔合わせをキッチンから見ていた龍さんが、にやにやと笑ってウマ君に声を飛ばした。

「ウマ、シカは俺のもんだからな、手えだすなよ~」

「え!?」

「おおー」

 え!?と言ったのは勿論私で、おおーと言ったのはウマ君。信じたのかい、ウマ君!それは君、ちょっと単純だよ~!

「あの、あの、龍さんのいう事は信じないで下さいね!」

 わたわたと両手を振り回して私が言うと、ウマ君はわかってるというように頷いてくれる。・・・ああ、良かった、そうだよね、彼は私よりここに慣れているはず。そう胸を撫で下ろしていると、ヒョイ、と顔を出した店長が口を挟んだ。

「そうだぞー、信じちゃダメだからな。シカちゃんは、俺が唾つけしてるから」

「は!?」

「おおー」


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