山神様にお願い


 だから、私はちゃんと頷いて返事をしていたのだけど、知らなかった、と言いたい。

 私がツルさんの膝枕で寝かかっている内に、虎&龍&女子大生3人で、勝手に私を慰めようの会、が結成されていて、それが翌日月曜日に海へ行こう!になっていたとは知らなかった。

 実際は、女友達は参加しない方向で、彼女達は適当に面白おかしく話していただけらしいけど。

 山神の虎と龍はがっつりその気になったらしい。

 そして、月曜日が休みな山神ファミリーは全員参加となったらしい。

 ツルさんは他のバイトが入っていたけど、交代要員を探しだせたらしいし、ウマ君は大学の講義を店長命令でサボるらしい。

 私は、お水を大量に飲んで意識が戻った夜の10時に、その事実を知ったのだ。

「――――――え!?」

 目の前で、龍さんが余所行きの顔でにっこり笑っている。

「海だよ海。シカにもちゃんと聞いたぞ。そしたらお前が行きまーすって言ったんだよ」

 なあ?と後ろを振り返り、そこにいた全員が、そうでーす!と言った。

 すでに女子大生は全員酔っ払いで、ツルさんとウマ君は行ったり来たりしてテーブルを片付けたりお皿を洗ったりしている。

 私は若干痛む頭を押さえながら、ええ?と呟いた。瞬きを激しくして動揺を伝えようと思ったけど、マスカラがひっついて目はほとんど開かなかったから、表情で表現するのは諦めた。


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