世界征服狂走論
はるか下のグラウンドから、男子生徒のはしゃぐ声が聞こえてきた。
もぞもぞ移動してフェンスから下をのぞく。
「あっ、チカちゃん、サッカーしてるよ!」
ジャージ姿の男子生徒、5、6人が、手入れされたグラウンドで広々とサッカーボールで遊んでる。次の時間、体育なのかな。
グラウンドをながめながら後ろ手にてまねくと、やがてチカもとなりに来て、紙パック片手に見おろした。
グラウンドをながめるなら、屋上は特等席。
「ウズウズする? 元サッカー部主将」
「別に」
素直じゃないチカは、そう言いながら目は離さない。分かりやすい。おもしろい。
あれはたぶん、1年生だ。
声と笑顔が、無邪気。動きも活発。絶対、1年生だ。
「1年生って、若いよね」
「お前のさっきの発言も十分若かったから安心しろよ」
いまの1年生って、アレだ、きっと学校が楽しくてしょうがない時期だ。
学校に慣れて友達とも仲よくなって、もうすぐ夏休みで、ただただ楽しい時期。
「チカあれくらいのころ何してた?」
「ムシですかそーですか」
そのときからあたしとチカは同じクラスだったけど。まだチカの記憶がない。
チカはしばらく空中を見つめて、考えるそぶりを見せると、やがてぽつりとつぶやいた。