俺ら参上ッッ!!


「もう一度聞くよ…
恋一のこと、好き??」

「……うん、好き」


何の迷いもない回答だった。

今さらなに当たり前なこと聞いてるんだ俺は…
でも…


「そうだとしても、俺は諦めないから」

「え…」


身体が動いた。
ひかりちゃんを抱きしめていた。


「聖くん…!」

「ほら…すぐこんなことだってできるんだよ?」


こんなイタズラっぽいことする予定じゃなかった。
だけど、ひかりちゃんが目の前にいるとどうしても意地悪したくなる。


「はな…してよ…」

「ひかりちゃんが俺から逃げられるならね」


ひかりちゃんの弱い力じゃできっこない。
分かりきっていても、やっぱりいじめたくなる。


「聖くんの…意地悪」


上目遣いで、涙目で言うひかりちゃん。

やばい…それは…


「ひかりちゃん…」

「聖くん!?」


思わず顔を近づけた。
後10㎝…
後5㎝…
後…2㎝


「っ…」


途中で目を開けると、ギュッと目を瞑って怖がっているひかりちゃんがいた。

何やってるんだ俺は…!


「ごめん…」


俺は身体を離した。

好きな人を怖がらせて、ほんとばかだ…


「ごめんなさい聖くん…
私がはっきりしないから…」

「なんで…ひかりちゃんが謝るのさ」


自分が情けなくなる。
強く歯を噛みしめた。


「私、聖くんの気持ちには…」

「…言わないで」


まだ…


「まだ俺負けたわけじゃないし、これからだからさ」


ひかりちゃんに精一杯の笑顔を見せる。

ちゃんと笑えてるかな…


「……」


ひかりちゃんはとても複雑そうな顔をしている。
正直自信なんてない。
ひかりちゃんを振り向かせるなんて不可能に近い。
だけど、諦める理由にはならない。


「俺は…
精一杯の俺の気持ちをひかりちゃんにぶつけるよ」

「聖くん…」

「だから…俺が何としてもネクタイ奪うから」


それだけ言って図書室を去った。

なんなんだ…この胸の痛み。

今まで感じたことない、風邪でも病気でもない痛み。


「これが…誰かを本気で好きになるってことか…」


こんなに痛いなんて知らなかった。

もしかして莉子も…

莉子も同じ状況だ。
諦めたって言ってるけど、絶対心の中では諦めてない。

莉子も辛い状況で頑張ってるんだ…
俺も頑張らないと…

そう思いながら教室へ帰った。


「ただいま莉子」

「おかえり聖!
…ねぇ、それケーキの図鑑じゃない」

「へ…??」


持ってきた本を見てみると、レシピ本は1つもなく、世界の様々なケーキが紹介されてある図鑑だった。


「嘘だろぉぉおおお!!!!!」


…まだまだみたいだ、俺は。









< 87 / 98 >

この作品をシェア

pagetop