あの日もアサガオが咲いていた。




好きなことを誰に咎められることなく出来る場所が近くにあること。

それは號樹にとってとても有り難いことだった。


しかしここ最近、帰り道を歩く號樹の表情は優れない。

増えた暗い溜め息の数に誰よりも早く気付いたのは號樹自身である。




「あら、おかえりなさーい!」




そんな表情を隠すように帰宅の声を上げれば、すぐさま返ってきた若い女の声。

聞き慣れたそれに號樹は、んーと返事を返す。


ひょっこりとリビングの扉から顔を出したのは、にっこりと笑った顔が印象的な號樹の母親だった。


既に三十代後半に差し掛かっている彼女だが、その幼い顔立ちからはとてもその年齢には見えない。

ましてや中学三年生の息子がいるなど誰も信じないだろう。




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