あの日もアサガオが咲いていた。
本当に年を重ねているのか甚だ疑わしい。
少なくとも號樹が見るアルバムの中の母親の姿は十年以上前から殆んど変わっていないように見える。
そんないつまでも変わらない母親を、號樹はアニメの登場人物のようだと思っていた。
「にーちゃ、おかーり!」
そんな母親の後に続くように聞こえてきた小さな女の子の鈴の鳴るような声。
靴を脱ぎ視線を上げれば、パタパタというこれまた可愛らしい足音が號樹のもとに近付いてくる。
その音と声を認識するや、一瞬にして緩む號樹の頬。
先程まで重くのしかかっていた暗い気持ちはあっという間にどこかに消え去って。
肩から荷物を下ろし両手を目一杯に広げれば、小さな女の子は躊躇うことなくその腕の中に飛び込んだ。