あの日もアサガオが咲いていた。
號樹は玄関口に置いたままだった荷物を片手に持ちもう片方の腕で汐莉を抱き上げると、そのままリビングに向かって歩き出す。
抱き上げられ高くなった視点に楽しそうに声をあげる汐莉。
そんな彼女に苦笑しながらリビングの中に入れば、美味しそうな匂いとともに再度母親が笑顔で彼を出迎えた。
どうやら今日の夕食はカレーらしい。
「あれ?とーちゃんまだなの?」
汐莉を床におろしリビングから見えるキッチンで鍋をかき混ぜる母親にもう一度ただいまと告げて、號樹は部屋の中を見渡す。
そこにはいつも定時で会社をあがり既に帰宅しているはずの父親の姿がない。
不思議に思って首を傾げれば、すぐに母から言葉が飛んできた。