あの日もアサガオが咲いていた。




「汐莉ー!ただいまー!」


「おかーりなさい!」




勢いのまま號樹に擦り寄りながらニコニコと笑っている小さな彼女の名前は望月汐莉(シオリ)。

正真正銘、今年四歳になる號樹の年の離れた妹である。

そして號樹の惜しげもない愛情を一身に受ける女の子でもあるのだ。


目に入れても痛くないというくらいに彼は彼女を溺愛している。

そんな汐莉もまた、家族の中の誰よりも號樹に懐いていた。


それをこの家の大黒柱である父親が涙を流しながら悔しがっている光景は、もはや日常茶飯事。

だが號樹はその位置を父に譲る気など毛頭ない。


まだまだ幼い彼女はこの家のアイドルだ。


頬擦りをするように汐莉を抱き締める號樹。

汐莉も父親には見せたことのないような笑顔で號樹に抱きついている。




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