泪の雫
タイトル未編集
「待って!」


急な坂道をサンダルで駆け下りる。


「どうしよう・・・!」


遠ざかる転げ落ちていく林檎。


買い物袋で塞がる両手。


上手く走れず、バランスを崩した途端、袋に入っていた残りの林檎を落としてしまう。


「しまった!」


平らな小道まで目の前だった。


零れ落ちた一つずつ林檎を拾いあげ、袋に入れる。


「大丈夫?」


誰かが林檎を拾いあげてくれた。


「あ、どうもすみませ…」



顔を上げた途端、思わず言葉を失ってしまった。


銀色の長髪、深緑の片眼、中世的なルックス


綺麗な人―――・・・


彼は目を細めて笑った。


「ありがとうございます。」


カッコイイ人は直視なんか出来ない…赤面してるのバレたかな?


林檎を受け取る瞬間、僅かに手が触れ合った。


益々恥ずかしくなり、軽くお辞儀をしてその場を去った。


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