二重人格神様~金と碧の王~

異様に静寂が広がる。部屋から出て廊下を数歩あるくと、とても嫌な予感がした。


「…あ、れ」

この感じ、何回も感じたことがある。殺意って、いうか…誰かに見られている。

恐る恐る振り返るが、誰もいない。


その時、アレスとの会話を思い出した。ルーテルさんのこと。気をつけろって。


戻ったほうがいいかもしれない。こんな時に、何かあったら迷惑をかけちゃう。


そう思い、踵を返したときだった。


「いのり」

「…え?」


暗闇から聞こえる声。懐かしいような、聞きなれた、愛しい声。

この声は…


「海鈴、さん?」

消えてしまいそうな声で呼び、近づくと、そこには壁に寄りかかる海鈴さんの姿。


う…う、そ!!


「海鈴さん!?」


慌てて近寄り、その姿を伺うと不意に伸びて来た手が私の手首を掴む。思いのほか強い力に彼を見上げればその瞳に胸がなる。


青い海と同じように澄んだ瞳。

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