二重人格神様~金と碧の王~
手をギュウと握り返した。その手を額に当てると、なんだか…おかしな気がした。


『いのり…ごめんな』

どうして、どうして…謝るの?どう、して…

『幸せにな…』

しあ…わせ、に?

『…あ…れ…』

そっと、私は目をあけた。目の前には、知らない男性。この人…だれ?どうして、手を握っているんだろう。

『…あなたは…だれ?』

『…俺のこと…わからない?』

『…わから…』

ないの?ううん…わたし、彼を知っているはず…なのに、どうして名前が出て来ないんだろう。思い出せない…誰、だっけ?

『そっか。それで、いいんだ』

『…え?』

『お前が、生きていてくれれば…それで、いい』

その台詞…少し前にも、言われた気がする。いつ、言われたんだっけ…

『あの…』

『いのり』

彼は、私の名前を呼んだ。そして、そのまま私の手を取りコツンと額をぶつける。不思議と嫌じゃなかった。知らない男性にこんなことをされているのに、身体も心もそれを受け入れている。
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