[完]バスケ王子に恋をして。
「え……?」
「奈未と行きたいなーと思って。行く?」

夏恋さんが持っていたのは……バスケの試合のチケット。

「はい!!」
「やったー♪あ、ここのチームね?春樹くんと竜基さんの所属チームなんだよ?」
「そーなんですか!?」
「うん。奈未しばらく外に出てないでしょ?だから気分転換にどうかなーと思って」
「はい!!行きます!!ありがとうございます!!」
「いーえ♪」

それから私達はたわいの無い話をした。

でもこの時はまだ知らなかったんだ……。

この試合が私を変えるなんて……。

「そーだ!!最近春樹くんとはどう?」
「え?春樹?」
「うん」
「別に普通ですけど……」

思わず言葉が詰まる。

「……けど?」
「……教えてくれないんですよね……誰も」
「え?何を?」
「春樹の過去のこと……春樹は今のことしか教えてくれないし……みんな過去のこと聞いたら自分で思い出せって言うし……どうして教えてくれないんですかね……」
「……」
「……夏恋さんは教えてくれますよね……?」
「……」
「……なんで……夏恋さんは信じてるのに……」

やっぱり私だけ仲間外れ……。

そんなことを思うと泣けてきた。

「……っ……ごめんなさい……」
「……じゃあ……逆に聞くけどなんで奈未は春樹くんのことを知りたいの……?」
「……え?」
「それを教えてくれないと……私だって教えられない」
「……それは……」

ただ春樹の過去を知りたいから……?

もっと春樹と過去について話し合いたいから……?

違う……

それはきっと……

「物足りないんです」
「……え?」
「私……春樹の何かが物足りないんです……懐かしいっていうか……何か覚えているんです……ボヤーッと。でもそれが出てこなくて……」

きっと私はこれが理由なんだ……。

春樹と私は過去で絶対に何かあった……。

「過去に何かあったっていうのはもうわかってるんです。もちろんそれは……夏恋さんだって咲羅さんもそう。絶対深い関わりがあったっていうのがわかってるんです。でも……春樹は違うんですよ……」
「違うって……?」
「何か……求めてるっていうか……罪悪感とか……苦しみとか……絶対そういうのがあったんです……ていうより春樹があると思うんです」
「春樹くんが……?」
「私の予想ですけど……もしかしたら春樹は私が事故に遭ったのは自分のせいだとかって追い詰めているんじゃないかって……」
「……」
「それに……私も気づいてるんです……」
「え……?」
「春樹にしかないもの……海斗じゃ足りない何かがあるんだって……私はそれを知りたいんです。というより……早く記憶を戻したいんです」

そう……これが私の本当の気持ち……
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