ama-oto
 「お風呂、先に入ってきてもいい?」
 「モチロン!」

 とびきりの笑顔でキスとハグをくれた。

 何も知らないとでも思っているのだろうか、心の中がジクジクしてきた。湯船につかりながら、気がつくと涙がこぼれた。信じるべきもの、つかまるべき綱はどこにあるのだろう。嘘ついて、疑って、ボロボロになって、思いすごしかもしれない事柄の前でうろたえて、何になるんだろう。湯船につかって天井を見上げた。涙がぼろぼろとこぼれてきた。

 何度も顔を洗って、気持ちを鎮めた。今、この時間だけでも、清人を信じよう。心の底から、自分が清人を好きだという気持ちだけに、身をゆだねよう。

お風呂から出て、着替えてリビングの方を見ると、清人が洗い終わった皿を片づけていた。感謝の笑顔を清人に向けて、冷蔵庫を開けた。

 「ありがとうね。いろいろやってもらっちゃった。」

 発泡酒とお茶とどちらにするか悩んで、お茶を選び、2つコップを出した。お茶を注いで、1つを清人に差し出した。
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