ama-oto
 頼む、出てくれ。

 心のどこかで祈りながら、菜月に電話をかけた。

 いつもだったら、遅くとも5コール目までには出るか、留守電に切り替わる。けれども、今日に限って10コール鳴らしても、出る気配がなく、電話を切った。

 「心当たりとかは?」
 「いや…ない。ただ大学院のこと、よく知らねーから。」
 「食堂じゃなくて外で、お前に言ってないってさ。」
 「うるせーな。」

 会話を切り上げて教室に向かった。

 もし浮気が本当だったとしたら…いや、当てつけ…だろうか…
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