ama-oto
interlude
 あいつが嘘をつくようなやつではないことを、俺はよく知っている。だから、あいつの話に耳を疑った。

 「そんなに気になるならさ、電話したら?」
 「まあ、そうだけど。」
 「今すぐかけりゃ、分かるんじゃねーの」
 「違ってたら?」
 「さあな。やましいとこがなけりゃ、出るだけだろ。」

 ムカっとした。菜月に限って、「やましい」ってことはないだろう。まぁ、自分のことは棚に置いてそういうこと言うか、と言われたら、返す言葉はないけれども。

 ただ、気になった。あれだけ、勉強と俺のことと、たまにしているバイト以外何かをしている様子がない菜月が、浮気できるほど器用に思えなかった。家事も掃除も器用でない人間が浮気、という思いと、どこか身勝手に、俺だけの菜月でいてほしいというわがまま。
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