恐怖短編集
「……腹が、減った」


腹の音が鳴ると同時に呟き、その場に座り込む。


小銭が落ちていないかと地面をはいつくばって探したかったが、人前でさすがにそこまではできない。


そんなときだった。


うまそうな揚げ物の匂いが鼻をついた。


洋太はその匂いの出所を探るように目を閉じ犬のように鼻をヒクヒクさせた。


「おっさん、これが食べたいのか?」


その声に目を開ける。


そこには、まさに匂いの出所を持っている髪の長い男が目の前に立っていた。


男の右手に握られたコンビニのコロッケに、唾液が一気にあふれ出す。


生唾を飲み込む俺に、男は軽く笑って「やるよ」と、右手のコロッケを差し出してきた。
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