恐怖短編集
ケラケラとおかしそうに笑う男に反し、竜は少しだけ血を浴びてしまった服を見てため息をつく。


「しかし、『ゆうた』って誰だろうな?」


「『ゆうた』?」


「あぁ。こいつ、死ぬ前にその名前を呼んだんだ」


「へぇ? 誰からも必要とされてない人間が誰かの名前を呼ぶなんて、珍しいな」


こいつらきまぐれで4つの死の選択をさせられ、外へ出れるのだと、まんまと引っかかってしまったのだ。



射撃の的にされた洋太の遺体を廊下に放置したまま、男たちは歩き出し、重たい鉄の扉は固く固く閉められた……。
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