恐怖短編集
「あなた、体が小さいからバレーで背を伸ばしなさい。

そうすれば、きっと綺麗なモデルにでもなれるわ」


何も迷う事なく、母親はそう言っていた。


普通の親なら冗談で言う事だろうが、私の母親は違う。


本気で私がモデルになれると、いや、モデルくらいなれて当然と思っているのだ。


けれど、意外にも私にバレーは合っていた。


放課後、体育館の隅でこちらを見つめる母親を意識しながらも、体を動かす事で随分とストレスを取り除く事が出来たのだ。



そして、母親の思惑通りに身長も急激に伸び始めた。


成長期だったせいもあるのか、中学生で170センチを超える身長。


私は母親の思い通りの背になれたのと、自分の趣味、将来バレー選手になりたいという夢まで見つけられて、大満足だった。


だから、当然高校へ上がってもバレーは続けるつもりだった。



けれど……。
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