*嘘月とオオカミ先輩*
サクヤ先輩を初めて見たのは、サークルの新歓。
いわゆる、新入生歓迎コンパというやつだ。
3階建ての居酒屋のワンフロアを貸しきるくらいの大所帯で、誰が新入生で誰が先輩だかも分からないような激しい飲み会だった。
次々に運ばれてくるビールのピッチャーと、一気飲みを煽るコール。
ぐちゃぐちゃに酔い乱れる人達の中で、先輩だけは違う雰囲気を放ってた。
赤い顔の上機嫌な先輩達の中で、1人だけ、世界の終わりみたいな青い顔をしていて。
後から聞くところによると、その日また彼女の浮気が発覚したそうだ。
まぁ、とにかく、その日からあたしはサクヤ先輩を気に留めるようになって。
運動が苦手なのにテニスのサークルなんかに入って、
気付いたら、先輩を目で追ってしまう自分がいた。