*嘘月とオオカミ先輩*

 

ボールを打ち込んでしまったコート裏は、ナイターの照明が届かないせいか体感温度が低く感じられる。
 
周囲に目を凝らして黄色いボールを探すけれど、暗がりの中ではなかなか見つけられなかった。
 


サークルの喧騒は遠く、冷えていく気温もあいまって、だんだん心細くなってくる。
 


前にもこんなふうに1人でボールを探したことがあったっけ。


あのときはサクヤ先輩が心配して付いてきてくれたんだった。
 


そんなことを考えながら、頭上の欠けた月を見上げて小さく息を吐く。


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