*ミーくんの好きなひと*


ま、別にいいんだけど。

 
私も、自分から首を突っ込んでノゾミの様子を確かめようとするほど気力があるわけじゃない。
 


ミーくんを思い出すたびに胸が締まるけど、別れた直後に散々泣いたから、涙はもう出なかった。
 
世界が少しよどんでいて、目に入るものすべてがつまらないだけだ。



「西野さん、いる?」
 


背後にあるドア付近から聞き慣れた声がして、身体がこわばった。
 

クラスメイトに私の所在を聞いているのは、あの日以来しつこく話しかけてくる元サッカー部の男。
 


気づかれないように前のドアから出て、反対側の非常階段を目指す。
 

あの能天気なポジティブさは厄介だ。

ペースを乱されてしまう。
 
それに今はまだ、静かに、しんみりしていたい。
 







重い扉を開けて外に出ると、すっかり秋めいた風に迎えられた。  


「あれ」 
 

冷えた空気の中に、先客がひとり。


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