*ミーくんの好きなひと*


非常階段の踊り場になっているそこには、友人の姿があった。



「ノゾミ、なにしてんの?」
 


私に気づくと、ノゾミはさっと顔を逸らして家の屋根が連なる景色に目を向ける。



「べつに」
 


かすれた声と一瞬目に入った表情で、泣いてたんだと分かった。



「……なんかあった?」
 


ノゾミの空気を侵さないように、入ってきたばかりの鉄の扉によりかかる。
 
制服越しに、ひんやりとした感触が伝わってきた。



「べつに、萌には関係ないし」
 


棘のある言い方も、今は別に気にならない。



「失恋でもした?」
 


自虐的に笑うと、思いのほかノゾミは振り返った。
 
泣きはらした赤い目で、鋭く睨みつけてくる。



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