*ミーくんの好きなひと*

***

 

頑張れば、夢は叶う。
 

そんな薄っぺらいスローガンを考えたのは、いったいどこの誰なんだろう。
 
安易に夢は叶うなんて断言しておいて、いざ叶わないとなると頑張りが足りない証拠だ、なんて、責任逃れも甚だしい。
 


世の中には、どんなに頑張ったって手に入らないものがある。
 



下校中、駅で手渡された予備校の案内をぐしゃぐしゃに丸めて、ゴミ箱に放った。
 
その直後、低い声に背中を叩かれる。



「あれ西野さん、A塾の模試受けないの?」
 


今捨てたのと同じ案内用紙を手に、サッカー部の森川が爽やかな笑みを浮かべていた。
 

倉庫裏で大泣きしてるところを見られて以来、顔を合わせるとちょっと気まずい。



「何でいるの」
 


そっけなく言うと、心外というように目を開いた。


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