*ミーくんの好きなひと*




ミーくんが好き。
 

大好き。





「も……もう、次の男見つけたし。そっちはそっちで、せいぜい頑張ってよね」
 

自分が崩れてしまわないように、精一杯の虚勢を張って「さよなら」を告げる。
 


私には、分かるから。
 

ミーくんの必死な気持ちが、痛いほど分かってしまうから。




「ごめんな、萌。……ありがとう」
 

力ない笑みを見せると、ミーくんは私の横を通り過ぎた。
 
大好きな手は頭をなでてくれることもなく、宙を浮いて素通りする。
 

大きくて細い身体が、触れそうな距離をすれ違い、遠ざかっていく。



「みっ……」
 


空気の余韻に絡めとられるように、


「ミーくんっ」
 

思わず振り向いた。



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