朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
救急車の到着って、すごく遅い。
哲の体を抱きしめたまま、止まらない血を止めようと、先のない指を二本、いっぺんに握った。
それも痛かったんだとは思うけど、哲はびくりと震え、大きく息を吸った。
「…蜜、大丈夫、だから。死、なないし」
…笑った!?
ばッ…馬鹿じゃないの!?
そりゃ死なないとは思うけど!
こんなに血が出て、こんなに真っ青な癖に!
指先、無くしちゃった癖に!
氷の中に、指先を2つ入れた袋を握りしめたまま。
私は哲の、ピアスの光る唇が、無理に笑みを浮かべようとして失敗するのを、どこか遠いもののように、見つめていた。
「哲……哲…哲」
私の声、だよね?
なんて情けない声で、呼んでるんだろう。
私の膝の上で、想像もつかないような痛みに耐えている哲に向かって。
一生分の「哲」を発音し続けた気がする。
救急車の音が、この上なくゆっくりと近付いた。