朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~


声高に話す他人の声と、喫煙所から漏れる煙草の匂いに、めまいがした。


救急車の音。
ストレッチャーの、音。



「みちゅしゃ…さん!」


ああ、やっと来てくれた上に、やっぱり言えてないし。



「哲は!?」

「まだ出て来ない、の。今さっき…ご両親がいらしたから…帰ろうかと思って」


哲の保険証や、着替えが要るだろう。

婿様が来てくれたなら、安心だ。


帰って、仕事を見て、お風呂入って。

着替えて。

それからもう一度、来よう。


その頃には、指がついたのか付かないのか、はっきりしているだろう…。




哲の恋路がうまく行かなければいいなんて。

思った自分に、驚いた。



…いや、駄目だ。
会えないよ。


驚いた、気がしただけで、本当は。



哲を失いたくない、と。

認めるわけには行かないけど、確かにそういう気持ちがあって。


この何日か、理解してしまわないように、すっかり思考の奥底に、くるみ込んでいただけだから。



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