朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
せっかく、ご両親が来てくれたのだし。
私は帰ろう。
こんな時間まで婿様が来ないなんて、工場に超急ぎの仕事が来たのかも知れない。
気分がどうだとか、都合や具合なんか、お構いなしに急ぎの仕事が来るのは、下請け業の運命だ。
出来なければ、次からその仕事は来なくなる。
哲に会いたかったけど、私は帰った方がいい。
帰って、残してきた仕事をしよう。
もう、終業時刻は過ぎているけれど。
「………あ」
思わず声が、出た。
今日は……今日は映画に行く日だった。
すっかり忘れてたけど、雪音ちゃんに連絡をし忘れた。
哲と、雪音ちゃん。
きゅうっと、こんな時なのに。
心に棘が刺さったように、苦しくなった。
指を怪我した事は、お付き合いをする妨げに、なるだろうか。
なる訳ない、とは思うけど。
なればいい、とも思ってしまって。
私は、一旦戻ります、と言いおいて、その場を、離れた。